STORY

1984年 - Macintosh発表会 クパチーノ

今日の9時41分、世界は永遠に変わる。今世紀の2大事件だ

「直せ」とスティーブ・ジョブズ(マイケル・ファスベンダー)は冷徹に言い放つ。「無理だ」と部下のアンディ(マイケル・スタールバーグ)が即答する。アップル新製品の発表会本番40分前。今日の主役のパソコンMacintoshが「ハロー」と挨拶するはずが、黙ったままなのだ。マーケティング担当のジョアンナ(ケイト・ウィンスレット)が、音声ソフトは宣伝していないから省こうと説得するが、ジョブズはそれなら発表会は中止だと絶対に譲らない。廊下に積まれたタイム誌を見たジョブズは、“今年の人”に選ばれるはずだったのに、元恋人のクリスアン(キャサリン・ウォーターストン)の娘リサにまつわるスキャンダルのせいで降ろされたと憤慨する。そのクリスアンがリサを連れて控室に現れる。娘の認知を拒否し、タイム誌の取材に「米国男性の28%は父親の可能性がある」と吐いた暴言に抗議に来たのだ。まだ5歳のリサは、父と信じる男から彼が開発したコンピュータにLisaと名付けたのは偶然だと言われ、小さな胸を痛める。15分前、音声デモと格闘するアンディを脅し、突然胸ポケット付きの白いシャツを用意しろとジョアンナに命じ、共同創業者で親友のウォズニアック(セス・ローゲン)から頼まれたAppleⅡチームへの謝辞をはねつけるジョブズ。そして2分前、自ら連れて来た新CEOのスカリー(ジェフ・ダニエルズ)と舞台袖で交わした意外な会話とは──?

1988年 - NeXT Cube発表会 サンフランシスコ オペラハウス

またリサの顔にボウルを投げたら・・・君は死ぬ

「僕はうれしくない」とジョブズは憮然と答える。Macintoshの売上不振から退社に追い込まれ、新たに立ち上げたネクストの発表会。新会社について来てくれたジョアンナから、アップルの連中がお祝いに来ていると言われたのだ。「誰から呼ぶ?」と聞かれたジョブズは、ウォズニアックを指名する。にこやかに現れたウォズに、マスコミに自分を批判したのは、スカリーに強制されたのかと確かめるジョブズ。正直な気持ちだと打ち明けるウォズは、相変わらず傲慢なジョブズに、マシンを創り出したのは自分なのに、何もしていないジョブズがなぜ天才と言われるのかと憤慨する。さらに、今日の主役のNeXT Cubeはパソコン史上最大の失敗作だと通告するのだった。小学校をサボって会場で遊んでいるリサを、クリスアンが迎えに来る。あの騒動の後、ジョブズはクリスアンに家を買い与え、十分な養育費を送っていた。彼女の浪費とジョブズからは投げやりに見える子育てに腹を立て、またしても激しい口論を繰り広げる。養子という複雑な家庭環境に育ったジョブズもまた、娘にどう接していいかわからない。別れ際にふいに抱き付いて「一緒に住みたい」と呟くリサを、不器用なジョブズは抱きしめ返すことさえできなかった。本番6分前、こっそり潜入したスカリーがジョブズの前に現れる。4年前、誰がジョブズを裏切ったのか、本当は何があったのか──激烈な“対決”の後、ジョアンナに告白したジョブズの“復讐計画”とは──?

1998年 - iMac発表会 サンフランシスコ シンフォニー・ホール

発表会直前になると皆、酔って本音を言うらしい

「やったな!」と満面の笑みで、スタッフとハイタッチするジョブズ。iMac発表会の本番前、誘導灯を消して完全な闇にするという長年の願いがようやく実現したのだ。2年前、業績不振でスカリーを解雇したアップルがネクストを買収したのを機に復帰したジョブズは、現在はCEOを務めていた。「うれしいね。ウォズも来てくれてる」と上機嫌で客席を指さすジョブズは、さらにジョアンナから莫大な“売上予測”を聞き、勝利の歓喜に浸るのだった。だが、ジョアンナはずっと不機嫌だった。ジョブズとリサの深刻な仲違いを聞いたからだ。母親が家を売るのを止めなかったリサに激怒したジョブズが、ハーバード大学の学費を払わないと宣告したのが原因だった。ジョアンナは仲直りしなければ会社を辞めると涙ながらに訴える。一人になったジョブズの瞼に、いつも自分の愛を求めていたリサの姿が次々と去来する。10分前、舞台に戻ったジョブズにウォズが、AppleⅡのチームに謝辞をという頼みを蒸し返す。10億ドルの損失を出し、破産まで90日を切っていたチームだと再びはねつけるジョブズ。記者と大勢の社員がいる前で、二人のバトルが始まる。開始直前、14年前のタイム誌の記事を読んだリサが、父への怒りを爆発させる。発表会は何があっても9時スタートを厳守してきたジョブズが、遅れるのも気にせず、リサに語った真実とは──?